風営法の物件選び|用途地域と保護対象施設の距離

「この物件で、風俗営業の許可は取れますか」。内見や仮押さえの段階でいちばん多いご相談です。風営法では営業できる場所が限られていて、しかもその線引きは都道府県の条例で決まります。検索して出てくる距離の数字が、そのまま岐阜県で通用するとは限りません。この記事では岐阜県の条例本文にあたり、営業できない用途地域と保護対象施設からの距離を整理します。契約書にサインする前にご覧ください。

目次

結論|制限は「用途地域」と「保護対象施設からの距離」の2つ

風営法第4条第2項第2号は、営業所が「良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内にあるとき」は、公安委員会は許可をしてはならないと定めています。

その基準を示す風営法施行令第6条は、制限地域を住居集合地域と保全対象施設(学校・病院など)の周辺の2種類に整理し、施設周辺については「敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲おおむね百メートルの区域を限度」としています。この枠の中で実際の数値を決めるのが各都道府県の条例です。だから県境をまたぐと数字が変わります。岐阜県のルールは「岐阜県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」(昭和59年岐阜県条例第33号)第3条にあります。

岐阜県で風俗営業ができない用途地域|住居系の8つ

岐阜県の条例第3条第1項第1号が制限地域とする用途地域は次のとおりです。

制限地域とされる用途地域例外
第一種低層住居専用地域/第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域/第二種中高層住居専用地域
田園住居地域
なし
第一種住居地域/第二種住居地域/準住居地域公安委員会が指定する地域は除かれる

見落とされがちなのが下の行です。第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域には「駅の周辺その他商業の用途に供される地域で人が多数往来する等特別の事情があるものと認めて公安委員会が指定する地域を除く」というただし書きがあります。つまり用途地域の名前が「住居地域」でも即アウトとは限りません。指定の有無は所轄警察署の生活安全課で確認することになります。

もうひとつの落とし穴が境界線です。用途地域は道路や河川で切り替わるため、1つの敷地や1棟のビルの中を境界線が通っていることがあります。ビル全体が商業地域に見えても、営業所に使う区画だけが住居系にかかれば結論が変わります。都市計画図で線がどこを通っているかを必ず図面で確かめてください。なお建築基準法にも別の制限があり、別表第二では「キャバレー、料理店その他これらに類するもの」を近隣商業地域(り項)と工業地域(を項)に建築してはならないとしています。

保護対象施設は5種類|敷地の周囲100メートル、商業地域内なら50メートル

岐阜県の条例第3条第1項第3号が定める施設と距離です。岐阜県は施設の種類で距離を変えていません。

保護対象施設(岐阜県条例第3条第1項第3号)制限される範囲
学校教育法第1条の学校(大学を除く)敷地の周囲100メートルの区域内
(その施設が商業地域内にあるときは50メートル)
病院、患者を入院させるための施設を有する診療所
図書館法第2条第1項の図書館
児童福祉法第39条第1項の保育所
幼保連携型認定こども園

この条文には実務上重要な要素が3つ入っています。

  • 起点は「敷地」であって建物ではありません。校舎から100メートル離れていても、グラウンドを含めた敷地の端から100メートル以内なら制限地域です。
  • 「これらの用に供するものと決定した土地を含む」とあるため、建築予定地も対象です。今は更地でも、保育所の建設が決まっていれば効いてきます。
  • 50メートルになるのは「対象施設が商業地域内にあるとき」。自分の物件ではなく施設の側がどの用途地域にあるかで決まります。読み違えやすいところです。

愛知県と比べるとこう違う|他県の数字は使えない

施設岐阜県愛知県(第二種・第三種地域)愛知県(第四種地域)
学校(大学を除く)・幼保連携型認定こども園100m
(施設が商業地域内なら50m)
100m
(法2条1項5号営業は70m)
70m
(法2条1項5号営業は50m)
病院・入院施設のある診療所・保育所100m
(同上)
50m
(法2条1項5号営業は30m)
30m
図書館100m
(同上)
条例第4条の表に掲げられていない

差がはっきり出ます。愛知県では病院や保育所の周りは50メートル(第四種地域なら30メートル)ですが、岐阜県では病院も保育所も学校と同じ100メートルです。また図書館は岐阜県では保護対象施設ですが、愛知県の第4条の表には入っていません。「病院から50メートル離れていれば大丈夫」という他県の解説を岐阜県に当てはめると判断を誤ります。

岐阜市の中心部には条例上の特例区域がある

岐阜県の条例第3条第2項第4号は、営業の場所が別表第一に掲げる地域にあるときは第3条第1項(用途地域と保護対象施設の制限)を適用しないと定めています。別表第一は条例の文言で「岐阜市の区域のうち、市道若宮町線と一般国道256号との交会点を起点とし、順次同国道、一般国道157号及び市道若宮町線を経て起点に至る線で囲まれた区域」。岐阜市の中心市街地にあたる、道路で囲まれた区画です。

もうひとつの別表第二は、午前0時以後の営業が許容される地域(第5条)や特定遊興飲食店営業の営業所を設置できる地域(第19条)として使われます。深夜にDJやライブで客に遊興をさせる営業は、岐阜県では設置できる場所が別表第二の区域に限られ、さらに病院・入院施設のある診療所・乳児院・母子生活支援施設・児童養護施設・児童家庭支援センターの敷地の周囲100メートル(その施設が商業地域内なら50メートル)以下の区域が除かれます。

ただし区域は道路名を連ねた文章で書かれており、目当ての物件が線の内側か外側かは地図と照らさないと判断できません。「中心部だから大丈夫らしい」という伝聞で契約を進めるのは危険です。その住所が区域に含まれるかを所轄警察署の生活安全課で確認してください。

契約前にやる3つの確認

1. 用途地域を調べる

岐阜市の物件なら「岐阜市都市計画情報の検索」から県域統合型GIS(地図情報)で確認できます。窓口は岐阜市都市建設部都市計画課(市庁舎15階、土地利用計画係 電話058-265-3906)。市のページ自身が「権利や義務の発生するもの、取引の資料とするもの」は「必ず本市の都市計画課の窓口でご確認ください」と案内しています。物件契約という判断材料にする以上、画面で済ませず窓口で確認するのが安全です。各務原市や大垣市なども同様の検索サービスを持っています。

2. 周囲100メートルの施設を洗い出す

地図上で物件を中心に半径100メートルの円を描き、学校・病院・入院施設のある診療所・図書館・保育所・幼保連携型認定こども園を探します。入院施設のない診療所は対象外ですが、外から見ただけでは分かりません。更地や工事中の土地があれば、何が建つ予定かを市町村の担当課に確認してください。

3. 所轄警察署の生活安全課に事前相談する

最終的な判断は公安委員会の審査です。岐阜県警察は許可申請の提出先を「営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課」と案内し、手数料・標準処理期間・必要書類はその窓口に問い合わせるよう求めています。物件の住所を持って相談すれば、公安委員会の指定地域や別表の区域に当たるかも含めて確認できます。あわせて、賃貸借契約の交渉時に許可が下りなかった場合の取扱いを貸主や仲介会社と話しておくと、万一のときの負担を小さくできる可能性があります。

そもそも自分の店に許可が要るのか|業態別の入口

同じ「バー」でも、接待をするか、深夜に酒を出すか、深夜に遊興をさせるかで必要な手続きが変わります。場所の確認と並行して、自分の店がどれに当たるかを固めておいてください。

注意したいのは、届出で足りる業態でも場所の確認は必要だという点です。岐阜県の条例第24条は、深夜における酒類提供飲食店営業を第3条第1項第1号の地域(=先ほどの住居系8地域)では営んではならないとしています。「届出だから場所は自由」にはなりません。業態と場所の見通しが立ったら、岐阜の風俗営業許可|申請の流れと期間をわかりやすく解説で全体像をつかんでおくとスケジュールを組みやすくなります。

物件を決めた後に判明したらどうなるか

場所の要件を満たさなければ、公安委員会は許可をすることができません。条例が「してはならない」と定めている以上、交渉でどうにかなる性質のものではありません。そして保証金・礼金・仲介手数料、着手済みの内装工事費、営業できない期間の家賃は原則として戻ってきません。岐阜県警察関係手数料徴収条例によれば、ぱちんこ屋等以外の風俗営業の許可申請手数料は1件24,000円(3月以内の期間を限って営むものは14,000円)で、不許可でも返還される性質のものではありません。

当事務所が「物件が決まる前、できれば契約する前にご相談ください」とお伝えしているのは、この段階でしか打てる手がないからです。

よくあるご質問

100メートルはどこから測るのですか

岐阜県の条例は「対象施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲百メートル」と定めています。建物ではなく敷地の外周が起点です。実際の測り方は運用に関わる部分なので、所轄警察署の生活安全課に物件の住所を伝えて確認するのが確実です。

近くに大学があります。影響しますか

条例が挙げる「学校」は学校教育法第1条の学校のうち大学を除いたものと明記されており、大学そのものは対象に入っていません。ただし大学の近くに附属の学校・図書館・診療所があればそちらが対象になり得ますので、周辺を一通り確認してください。

近所に保育所ができる計画があると聞きました

条例は敷地に「これらの用に供するものと決定した土地を含む」としているため、建築予定地も制限の対象です。まだ建物がなくても、用途が決まっている土地であれば距離を測る必要があります。周辺に更地や工事中の土地があるときは、市町村の担当課で計画の有無を確認しておくと安心です。

まとめ

  • 営業できない場所は用途地域による制限と保護対象施設からの距離による制限の2つ。線引きは都道府県の条例が決めます。
  • 岐阜県では住居系の8つの用途地域が制限地域。第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域には公安委員会の指定地域を除くただし書きがあります。
  • 保護対象施設は学校(大学を除く)・病院と入院施設のある診療所・図書館・保育所・幼保連携型認定こども園の5種類。距離は敷地の周囲100メートル、その施設が商業地域内にあるときは50メートルです。
  • 愛知県は施設と地域区分で距離が変わり、図書館は表に入っていません。他県の数字は岐阜県には使えません。
  • 契約前は用途地域の確認 → 周囲100メートルの施設の洗い出し → 所轄警察署の生活安全課への事前相談の3ステップで。

アストラ行政書士事務所では、岐阜県と愛知県を中心に、風営法・飲食店営業の許認可をお手伝いしています。初回相談は無料です。「この住所で営業できるか」という一点だけのご相談でも構いません。物件を押さえる前が、いちばんお役に立てるタイミングです。お問い合わせはこちらからお気軽にご連絡ください。

出典

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案への適用を保証するものではありません。制度の内容は改正される場合があります。

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