風俗営業許可は引き継げる?相続・合併・法人成り

「父の店を継ぎたい」「個人でやってきた店を法人にしたい」「知り合いの店を居抜きで買い取る話がある」。どれも、風俗営業許可を引き継げるかどうかが最初の関門です。結論から言うと、引き継げるのは相続・法人の合併・法人の分割の3つだけ。法人成りと事業譲渡は取り直しになります。飲食店営業許可とは扱いが違う点を含めて、条文と岐阜県の手数料まで整理します。

目次

結論|風俗営業許可を引き継げるのは3つの場合だけ

風営法が営業者の地位の承継を認めているのは、第7条(相続)・第7条の2(法人の合併)・第7条の3(法人の分割)の3つだけです。それ以外の引き継ぎ方は条文に存在しません。

引き継ぎの原因承継できるか手続きと期限
相続(経営者の死亡)できる被相続人の死亡後60日以内に公安委員会へ承認申請(法第7条第1項)
法人の合併できるあらかじめ公安委員会の承認(法第7条の2第1項)
法人の分割できるあらかじめ公安委員会の承認(法第7条の3第1項)
個人事業主の法人成りできない法人として新規に許可を取り直す
事業譲渡(店の売買・居抜き)できない譲受人が新規に許可を取り直す

承継できる3つがいずれも「届出」ではなく「承認」である点が重要です。書類を出せば終わりではなく、公安委員会の審査を受けて承認をもらう必要があります。

相続は死亡後60日以内|申請さえ出せば審査中も営業できる

風営法第7条第1項は、相続人が被相続人の営んでいた風俗営業を引き続き営もうとするときは「被相続人の死亡後六十日以内に公安委員会に申請して、その承認を受けなければならない」と定めています。

知っておいていただきたいのが第7条第2項です。承認申請をした場合、被相続人の死亡の日から、承認を受ける日または承認をしない旨の通知を受ける日までの間は、被相続人に対してした許可はその相続人に対してしたものとみなされます。申請さえ出しておけば、審査が終わるまで営業を止めずに済む建て付けです。逆に言えば、申請を出さないまま日数が過ぎていくのがいちばん危険です。

  • 引き継ぐのは1人だけ。条文は「相続人が二人以上ある場合においてその協議により当該風俗営業を承継すべき相続人を定めたときは、その者」としており、共同で許可を持つ形にはできません。
  • 承認にも欠格事由の審査があります。第7条第3項が第4条第1項を準用しているためです。
  • 承認後は許可証の書換えが必要。第7条第5項により遅滞なく被相続人の許可証を提出します。承認されなかったときは第6項により返納します。

葬儀や相続人間の話し合いをしているうちに60日は過ぎます。相続人が誰になるかが固まらない段階でも、営業を続ける意思があるなら早めに所轄警察署の生活安全課へご相談ください。

法人の合併・分割は「あらかじめ」承認|後からでは間に合わない

第7条の2第1項は「あらかじめ合併について……公安委員会の承認を受けたときは、合併後存続し、又は合併により設立された法人は、風俗営業者の地位を承継する」としています。分割の第7条の3第1項も同じく「あらかじめ」です。

相続と決定的に違うのがここです。相続は予測できない出来事なので事後に60日の猶予がありますが、合併と分割は事前に承認を受けていなければ地位を承継できません。効力発生日が来てから申請しても条文の「あらかじめ」を満たさず、承継ではなく新規許可になります。組織再編を進めるときは、登記のスケジュールを固める前に承認申請の見通しを所轄警察署に確認しておくことをお勧めします。合併・分割の承認にも第4条第1項が準用されるため(第7条の2第2項、第7条の3第2項)、承継後の法人の役員についても欠格事由の確認が入ります。

法人成りでは引き継げない|個人と法人は別人格

個人事業主として許可を取り、その後に会社を設立して事業を法人へ移す。いわゆる法人成りですが、風営法には個人から法人へ許可を引き継ぐ規定がありません。承継が認められているのは相続・合併・分割の3つで、そのいずれにも当てはまらないからです。

許可は「その人」に対して与えられています。同じ人が代表を務める会社でも、法律上は別の人格です。したがって法人名義で営業するには法人として新たに許可を取り直すことになり、営業所の構造設備も、場所の要件も、管理者の選任ももう一度審査を受けます。

多くの経営者が心配されるのが「切り替えの間、店を閉めなければならないのか」という点です。個人の許可で営業を続けながら法人名義の申請を進める順番が考えられますが、同一の営業所についてどう扱われるかは運用に関わります。登記や税務の日程を確定させる前に、所轄警察署の生活安全課へ段取りをご相談ください。順番を誤ると、無許可で営業した期間が生じかねません。

事業譲渡でも引き継げない|飲食店営業許可との決定的な違い

この記事でいちばんお伝えしたいのがここです。飲食店営業許可(食品衛生法)と風俗営業許可(風営法)では、事業譲渡の扱いが正反対になっています。

食品衛生法第56条第1項は、許可営業者が「当該営業を譲渡し、又は許可営業者について相続、合併若しくは分割(当該営業を承継させるものに限る。)があつたとき」は、譲り受けた者や相続人・合併後の法人・分割により営業を承継した法人が許可営業者の地位を承継すると定め、第2項で「遅滞なく、その事実を証する書面を添えて、その旨を都道府県知事に届け出なければならない」としています。営業の譲渡が承継の対象に加わったのは令和5年(2023年)12月13日からで、それ以前は相続・合併・分割だけでした。

つまり飲食店営業許可は、事業譲渡でも「届出」で地位を引き継げます。一方、風営法には営業の譲渡による承継の規定そのものがありません。

引き継ぎの原因飲食店営業許可(食品衛生法)風俗営業許可(風営法)
相続地位を承継し、遅滞なく届出死亡後60日以内に承認申請
法人の合併地位を承継し、遅滞なく届出あらかじめ承認
法人の分割地位を承継し、遅滞なく届出あらかじめ承認
営業の譲渡(事業譲渡)地位を承継し、遅滞なく届出
(令和5年12月13日から)
規定がなく、新規に許可を取り直す
個人から法人へ(法人成り)営業の譲渡に当たるかを保健所に確認規定がなく、新規に許可を取り直す

この違いが、居抜きで店を引き継ぐ場面でそのまま問題になります。「飲食店営業許可は保健所への届出で引き継げたから、風営法も同じだろう」という誤解がいちばん危険です。設備も内装も看板もそのまま使えて飲食店営業許可の名義も変わったのに、風俗営業許可だけは前の営業者のものが残っている。この状態で接待を伴う営業を始めれば、無許可営業として扱われかねません。

店の売買の話が出た段階で、売買代金に「許可が取り直せること」が織り込まれているかを確認してください。譲受人側で新規の許可が下りるまで営業できない期間が生じますし、そもそも譲受人が欠格事由に当たれば許可が下りません。

承継でも取り直しでも避けて通れない2つ|欠格事由と管理者

1つめは欠格事由です。風営法第4条第1項は、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者や、一定の罪により刑に処せられて5年を経過しない者などを列挙しています。この第4条第1項は、相続の承認(第7条第3項)、合併の承認(第7条の2第2項)、分割の承認(第7条の3第2項)のいずれにも準用されます。亡くなった方が許可を持っていたことは、相続人が欠格事由に当たらないことの保証にはなりません。どのような事由が並んでいるかは風俗営業許可の欠格事由|申請前に確認するポイントでご確認ください。

2つめは管理者です。第24条第1項は営業所ごとに管理者1人の選任を義務づけ、ただし書きで「管理者として選任した者が欠けるに至つたときは、その日から十四日間は、管理者を選任しておかなくてもよい」としています。猶予は14日です。経営者本人が管理者を兼ねていた場合、相続や法人成りで体制が変わると見直しが必要になります。第24条第2項では未成年者などは管理者になれないとされているため、誰を立てるかも早めに決めておく必要があります。詳しくは風俗営業の「管理者」とは?選任義務・講習・なれない人を解説をご覧ください。

さらに、法人成りや事業譲渡で新規の許可を取り直す場合は、場所の要件も現在の基準で改めて審査されます。前の営業者が許可を取った当時から周辺に保育所や診療所ができていれば、同じ場所でも結論が変わることがあります。岐阜県の距離の基準は風営法の物件選び|用途地域と保護対象施設の距離で整理していますので、取り直しの見込みが立った時点でご確認ください。全体のスケジュール感は岐阜の風俗営業許可|申請の流れと期間をわかりやすく解説が参考になります。

岐阜県での提出先・様式・手数料

提出先は営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課です。岐阜県警察は風俗営業の許可申請についてこの窓口を案内し、必要書類・手数料・標準処理期間は「所轄警察署の生活安全課へ問い合わせてください」としています。

なお岐阜県警察の「風俗営業に関する手続」のページに個別の案内があるのは、許可申請・構造設備の変更承認申請・変更届出・許可証の書換え・許可証の返納などで、相続や合併・分割の承継手続きは項目として掲載されていません。ウェブだけで進めようとせず、所轄警察署への確認が前提になる手続きだとお考えください。申請書の様式は国家公安委員会規則の別記様式で、全国共通です(相続承認申請書=別記様式第6号、合併承認申請書=第7号、分割承認申請書=第8号)。

手数料は都道府県の条例で定められます。岐阜県警察関係手数料徴収条例では次のとおりです。

手続き岐阜県の手数料
風俗営業相続承認申請1件につき9,000円(同時に1を超える承認を申請する場合、超える分は3,800円)
風俗営業者合併承認申請1件につき12,000円(同上の場合、超える分は3,800円)
風俗営業者分割承認申請1件につき12,000円(同上の場合、超える分は3,800円)
風俗営業許可申請(ぱちんこ屋等以外)1件につき24,000円(3月以内の期間を限って営むものは14,000円)
風俗営業許可証書換え1件につき1,500円

相続の承認申請が9,000円なのに対し、取り直しになると許可申請で24,000円。金額の差以上に効いてくるのが、審査にかかる期間と、その間の営業をどうするかという問題です。「引き継げる形」に当てはまるかどうかを最初に見極めることが、いちばんの節約になります。

よくあるご質問

相続の承認が下りるまで、店を閉めなければいけませんか

風営法第7条第2項は、承認申請をした場合、被相続人の死亡の日から承認を受ける日または承認をしない旨の通知を受ける日までは、被相続人に対してした許可はその相続人に対してしたものとみなす、と定めています。申請を出しておけば審査中も営業を続けられる建て付けです。ただし申請しないまま60日を過ぎると、この扱いは使えません。

60日を過ぎてしまいました。もう営業できませんか

第7条第1項の承認申請の期限は「被相続人の死亡後六十日以内」と条文で区切られています。期限を過ぎた場合の取扱いは個別の事情によりますので、まずは所轄警察署の生活安全課へご相談ください。承継としての承認が受けられない場合は、新規の許可申請という形で立て直すことになります。営業を続けたまま放置するのは避けてください。

深夜酒類提供飲食店営業の届出は引き継げますか

深夜酒類提供飲食店営業は許可ではなく届出(風営法第33条)で、同条には相続や合併で届出を引き継ぐという規定は置かれていません。営業者が変わるときの取扱いは所轄警察署の生活安全課でご確認ください。届出そのものの流れは岐阜の深夜酒類提供飲食店営業届出|流れ・必要書類・10日前ルールで解説しています。なお特定遊興飲食店営業については、第31条の23が第7条から第7条の3までを準用しているため、風俗営業と同じく相続・合併・分割による承継の仕組みがあります。

まとめ

  • 風俗営業許可を引き継げるのは相続・法人の合併・法人の分割の3つだけです。
  • 相続は死亡後60日以内に承認申請。申請を出せば審査中も営業を続けられます(法第7条第2項)。
  • 合併・分割は「あらかじめ」の承認が条件で、効力発生日が来てからでは承継できません。
  • 法人成りと事業譲渡は取り直し。飲食店営業許可は令和5年12月13日から事業譲渡でも届出で引き継げますが、風営法にその仕組みはありません。
  • 承継でも取り直しでも、欠格事由の確認と管理者の選任は避けて通れません。
  • 岐阜県の手数料は相続承認申請が9,000円、合併・分割の承認申請が各12,000円、新規の許可申請が24,000円です。

アストラ行政書士事務所では、岐阜県と愛知県を中心に、風営法・飲食店営業の許認可をお手伝いしています。承継の場面は期限のある手続きが多く、判断を急がなければならないことがほとんどです。初回相談は無料です。「このケースは引き継げるのか」という見極めだけでも構いませんので、お問い合わせはこちらから早めにご連絡ください。

出典

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案への適用を保証するものではありません。制度の内容は改正される場合があります。

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